
---はじめに---
平成21年2月20日、日本の獣医師が待ちに待った獣医療法施行規則の改正が行われました。この改正により、核種が99mTc(テクネチウム-99m)、18F(フッ素-18)のみに限定されるものの、動物診療における核医学検査の実施が可能となりました。 北里大学獣医学部では2008年に新しくなった動物病院に、全国に先駆けてPETならびにSPECT検査を可能とする核医学検査装置を導入し、ペットすなわち伴侶動物に対して、2009年3月からPETならびにSPECT検査を開始しました。
---何ができるの?---
これまで獣医療で用いられてきた画像診断法のX線、超音波、CT、MRIではおもに形を調べるのみでしたが、核医学検査では腎臓や心臓、肝臓などの臓器の「機能」検査や、腫瘍の悪性度の判定および転移の検査などに用いられます。
小型犬での発生が多いとされているものの、確定診断が困難だった門脈-体循環シャント(PSS)や、甲状腺機能亢進・低下症の診断も可能となります。
犬でもアルツハイマーのような痴呆症があることが知られてきていますが、ヒトではその確定診断にPET検査は使われていますし、今後はこのような病気に対する知見が多く得られるかもしれません。
残念ながら、獣医療での核医学検査については、適切なパンフレットができていませんが、日本アイソトープ協会、核医学会、日本核医学技術学会の共同で核医学に関するパンフレットが作成されていますので、さらに詳しく知りたい方はこちら(核医学検査Q&A @ 日本アイソトープ協会)を参考にされてください。ただし、あくまでも使用できる核種が99mTc、18Fですので、ヒトではできても、獣医療ではできない検査も多いことにご注意ください。(もちろん、ヒトでは行われていない
PSSの検査もあるわけですが)
---どのような時に検査を受ければ良いの?---
たとえば健康診断としてPET検査を受けられてもよいかと思います。最近では、飼い主の皆さんが本当に大切にしてくれていますので、動物の寿命も延びてきています。そのため、腫瘍(がん)の患者さんが多くなっています。ヒトと同じく、早くに見つければそれだけ治る可能性も高くなりますし、治療方法を選択する幅も広がります。
他にも、ちょっと跛行しているのに、X線検査でもわからない時には、骨シンチグラフィという検査があり、ほとんどX線では見えない疲労骨折や骨肉腫の診断に威力を発揮します。
ただし、検査は完全予約制です。といいますのも、核医学検査で使う放射性医薬品は、時間がたつとあっという間に減衰して消えてしまうため、投薬する時間をきっちり守らなければなりません。それに、原則として麻酔が必要ですので、あらかじめ血液検査や一般的な身体検査を行ってからになります。
検査の留意事項として、最低でも24時間、99mTcの場合で投与量が多くなると2日間の入院が法律で義務付けられています。退院後は、飼い主の健康に対する被ばくの影響はまったくありませんので、ご安心ください。
---どうすれば検査を受けられるの?---
まずはかかりつけの動物病院で主治医の先生と相談してみてください。主治医の先生から、本学附属小動物診療センターの放射線科に連絡を取ってもらい、これまでの経過や血液検査の結果を含む紹介状を持参していただけると助かります。
本院は青森県の十和田市にありますので、交通の便がやや悪いですが、最近では八戸駅から奥入瀬渓流方面にシャトルバスを出しているホテルもあったり、八甲田−十和田という大自然を満喫するついでに、ペットの健康診断を受けておく、というのもよいかもしれません。
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--- 問い合わせ先 ---
〒034-8628 青森県十和田市東23番町35-1
北里大学獣医学部附属動物病院
TEL 0176-24-9436; FAX 0176-22-3057
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