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X線写真の読影法 1999年7月19日更新
はじめに/X線写真の読影上のポイント/胸部/心臓/腹部/
頭部/頸部/脊椎/四肢・関節/他診断法の併用/妊娠診断
はじめに
X線写真の撮影・読影は獣医臨床上、異常動物の診断に当たっての日常的な作業である。
X線写真の読影にあたっては、X線照射の条件(mAs・kVp)、X線フィルム(フィルムスピード・スクリーンスピード)およびフィルムの現像状態、動物のポジショニングを明らかにした上で異常所見の検索作業に移る。動物種(品種)・性別・年齢・肥満状況はX線の読影に影響を与えるため、これらの事項を押さえておくことは極めて重要である。異常動物に対する稟告はX線の読影上を支持することもあるが、逆に稟告に依存しすぎるとしばしばX線フィルム上の重要所見を見逃すことにもつながりかねない。そのような事態を防ぐためにも日常的に客観的なX線写真の読影・評価法を定めてルーチン化しておくことが望まれる。
準備:シャーカステン・ホットライト・読影場所は静かな暗い部屋が望ましい
X線写真の読影上のポイント
診断作業に入る前に、撮影したフィルムについて基本的に、優れている(Excellent)・良い(Good)・まぁまぁ(Fair)・劣る(Poor)の4段階で評価する。
1.X線写真の評価(フィルムの黒化度・像のむら・アーティファクトの存在)
(Ex・Go・F・P)改善するにはなにが必要か?
2.動物の体位(望んだ撮影方向に従っているか?望んだ部位全体が写っているか?)
(Ex・G・F・P)改善するにはなにが必要か?
| 胸部X線写真読影前のチェックポイント ・フィルムサイズは適切か? |
| 胸部X線写真で重要な解剖学的部位・構造 1.骨 ⇒ 頸椎・胸椎・脊椎・肋骨・胸骨 |
| 重要語句 気管支パターン・肺胞パターン・間質パターン・血管パターン・混合パターン |
心臓の読影の際のポイント
心臓の読影では心臓の大きさ・かたち・機能 (Size・Shape・Function)を読み取り、正常と異常の区別ができるようにする習慣を付ける。
1.心サイズ
(Heart size)
正常心サイズ
a) Lateral像
1) 心臓は2.5〜3.5肋間分を占める。
2) 右心:左心比は約3:2
3) 心臓の高さと胸部の高さの比は約3:2
4) 心サイズ(長軸+単軸の和)は第4胸椎(T4)から椎骨8.5-10.6個分の範囲内である。
b) VD (DV)像
1) 犬では、心臓の幅は胸腔の幅の約半分〜2/3
2) 猫では、心臓の幅は胸腔の幅の約半分
3) 心サイズ(長軸+単軸の和)は第4胸椎(T4)から椎骨9.4-11個分の範囲内である。
2.心シェイプ
(Heart shape)
a) 胸部の狭い・深い犬(ドーベルマンなど)
Lateral像ではほぼ垂直に(心尖部がほぼ真下に)位置し、そのためVD (DV)像では心臓が球状に見える。
b) 胸部の広い犬(ブルドッグ・ダックスフントなど)Lateral像では短く、やや球状に見え、VD (DV)像ではより球状に見え、右心が大きめに見える。
c) 猫
1) 心臓は円錐状で、品種間にはほとんど変動がない。
2) Lateral像では幾分まっすぐに立っているように見えるが、加齢に伴い心臓は「寄っかかって」見えるようになり、胸骨との接触面積が増加する。
3) VD (DV)像では、大動脈部が結節状に見える。
3.通常は心室・心房・弁・冠状動静脈の区別は曖昧である。
4.正常の心臓の各構造は、時計方位で以下の位置に認められる(Clock diagram)。
| Lateral | VD (DV) | |
| 左心耳 (Left auricle) | 認められない | 2:00-3:00 |
| 左心房 (Lt. atrium) | 12:00-2:00 | 認められない |
| 心後部ウェスト (Caudal waist) | 2:00 | 認められない |
| 左心室 (Lt. ventricle) | 2:00-5:00 | 2:00-5:00 |
| 右心室 (Right ventricle) | 5:00-9:00 | 5:00-9:00 |
| 心前部ウェスト (Cranial waist) | 9:00 | 認められない |
| 右心耳 (Rt. auricle) | 9:00-10:00 | 認められない |
| 右心房 (Rt. atrium) | 認められない | 9:00-11:00 |
| 主肺動脈 (Main pulmonary artery) | 9:00-10:00 | 1:00-2:00 |
| 大動脈弓 (Aortic arch) | 9:00-11:00 | 11:00-1:00 |
5.機能分析
(Heart function
analysis)
心臓の形態と合わせて前大静脈サイズ・胸腔・肺実質を読みとることにより、充血・鬱血・および心不全等の状態を解析する。
X線診断の可能な心異常・心疾患
肥大・拡張・拡大 (Enlargement)
Lateral |
VD / DV |
|
| 右心房肥大 | 気管の背方挙上 | 9時〜11時時計方位の突出および拡大 |
| 右心耳肥大 | 前房室境界の明瞭化 | 変化は認められない。 |
| 右心室肥大 | 心臓・胸椎接触面積の増大、心尖の上昇 | 5:00〜9:00時計方位の拡大(Reverse "D" shape)、心尖の左方変位 |
| 左心房肥大 | 後部房室境界部の喪失(不明瞭化)、主気管支の背方変位、心後背部境界の増高 | 左右主気管支のずれ("bow-legged Cowboy")、心シルエットの二重化 |
| 左心耳肥大 | 変化なし | 2:00〜3:00時計方位の突出 |
| 左心室肥大 | 心臓の伸展と気管の背方挙上、後部心臓境界部の突出 | 通常まっすぐな左心部が丸みを帯びる。心尖部の鈍化 |
| 大動脈弓拡張 | 9:00-11:00時計方位の突出 | 11:00-1:00時計方位の突出 |
| 主肺動脈拡張 | 9:00-1:00方位の突出 | 1:00時計方位の突出 |
先天性心疾患 (Congenital Cardiac Disease)
| 1.動脈管遺残 (Patent Ductus Arteriosus,
PDA) a)大動脈から肺動脈への左→右シャントの存在 b)血液の左心への再循環 c) X線所見 @肺動静脈の拡張 A左心房・左心室拡大 B下行大動脈の突出 CMPA拡張 |
| 2.肺動脈狭窄 (Pulmonic Stenosis, PS) a)重度では腹水が認められることがある。 b) X線所見 @右心室拡大 AMPA拡張(後狭窄性拡張)B正常(減少性?)血管像 |
| 3.大動脈狭窄 (Aortic Stenosis, AS) a)異常X線所見が認められない場合がある。 b) X線所見 @頭側縦隔後部の拡張(後狭窄性拡張)A左心室の伸展 B時に左心房拡大 C肺動脈は通常、正常所見を示す |
| 4.心室中隔欠損 (Ventraricular Septal
Defect, VSD) a)通常は左→右シャント b) X線所見 @欠損サイズと重度によりシャント方向は変わる A肺動静脈拡大 B両心室拡大 C左心房拡大 |
| 5.ファロー四徴 (Tetralogy of Fallot, TOF)
a)基本的に2つの障害が心臓に二次性変化をもたらす。 @肺動脈狭窄→右心室肥大 A(高位)心室中隔欠損→大動脈騎乗 b) X線所見 @MPAの突出・拡大(後狭窄性肥大)A右心室拡大 B乏血管性の肺像 (Hypovascular lung) |
後天(獲得性)性心疾患 (Acquired Cardiac Diseases)
| 1.僧帽弁閉鎖不全症(Mitral Insufficiency, MI) a)僧帽弁逸脱症(Mitral regurgitation, MR)と同様の所見を呈する。 b) X線所見 @左心房拡大 A肺静脈拡張 B左心室拡大 C肺胞性肺疾患(肺水腫) |
| 2.三尖弁閉鎖不全(Tricuspid Insufficiency,
TI) a) MIの二次性変化としてしばしば認められる b) X線所見 @右心房拡大 A右心室拡大 |
| 3.心筋症(Cardiomyopathy) a)@肥大型(主に猫)A拡張型(鬱血性;主に犬)Bその他(X線では区別が困難なもの) b)肥大性心筋症のX線所見 @両心房性拡大 A心室は通常、正常所見 B胸水または肺水腫 c) 鬱血性心筋症のX線所見 @全体的な心拡大 A両室性心拡大 B胸水または肺水腫(猫) C肺水腫または腹水(犬) |
| 4.フィラリア感染症(Heartworm Disease,
Dirofilariasis) a)1次性の肺動脈拡張に最も共通した原因である。 b) X線所見 @MPA突出・拡大 A拡大して異常な肺動脈 B右心室拡大 C重度では腹水を認める |
| 5.小心症(Microcardia) a)病因 @脱水性ショック (hypovolemia) Aアディソン病(Addison's Dz.) b) X線所見 @正常よりも小さな心シルエット A肺の血管は正常または細い |
| 6.心嚢水腫(Pericardiac Effusion, PE) a)多くの病因によって引き起こされる @腫瘍性 A突発性(Idiopathic) B先天性 b) X線所見 @Lat/VD所見共に巨大・球状の心臓 A心シルエットは両側性に肋骨に接触する事がある("Carpet heart") |
心臓X線写真の読影と所見の記述
| 心臓の読影 Size Analysis 心サイズ VHS(Vertebral Heart Size) 基本は第4脊椎(T4)から後方へ脊椎何個分の距離かを測定する。 |
Lateral像 長軸(心基部→心尖)+ 単軸(左心端→右心端):
正常値:8.5-10.6 |
VD像 長軸(心基部→心尖)+ 単軸(左心端→右心端):
正常値:9.4-11 |
Ref: Buchanan et al. JAVMA VOL206, No2, January 15, 1995.
ここから先はもう少し待って下さい。お見苦しいところ申し訳ありません。
腹部の読影・頭部の読影・頸部の読影・脊椎の読影・四肢・関節の読影・妊娠診断
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June, 1999.