私は大学を卒業後、さいたま市に入職して今年で5年目になります。
私の職場である健康科学研究センターでは、感染症、食品、環境の安全性確保のための微生物学的、理化学的調査研究や試験検査の業務を行っており、いわゆる地方衛生研究所と地方環境研究所の両方の機能を併せ持った機関です。
その中で、私は環境科学課という環境に関する調査分析業務を行う課に属しており、そこで河川水や河川底質、工場排水や地下水など水環境に係る調査分析業
務に従事しています。関係部署からの依頼に基づき、生物化学的酸素要求量(Biochemical Oxygen Demand :
BOD)や大腸菌群数のほか重金属類や農薬など、人の健康の保護及び生活環境の保全のために法律等で定められている項目について定期的に調査しています。
入職当初は想像していた獣医師の仕事とはかけ離れた仕事内容に戸惑いを感じることが数多くありました。しかし水環境という獣医師の職域からは少し離れた
分野での仕事をすることで水系感染症について深く考えるようになり、現在では国立感染症研究所をはじめとした各機関の先生方の助言を仰ぎながら研究活動も
行っています。
薬理学研究室に興味を持ってこのメッセージを読んで下さっている皆さん。現在の薬理学研究室には先生方はもちろん、多くの優秀な大学院生にも恵まれてお
り、これ以上ない学習環境が整っています。研究活動を通して得られる、物事を秩序立てて考え実行する力やここで築き上げた人間関係は社会人になっても必ず
貴重な財産になります。また社会人になると、私のように自分が思い描いていた仕事と現実とのギャップに悩むことも出てくるかもしれません。しかし、将来ど
のような環境におかれても獣医師として自分が学んできたことを活かすという姿勢は忘れないで下さい。特に、「自分はこの分野なら負けない」とか「この分野
をやりたい」という強い思いがあれば、その分野と現在の仕事をどのように結びつけるかを考えることで必ず道は開け、社会人としてのあなたの価値を一層高め
てくれることでしょう。その土台をぜひ研究室生活で築いてください。私たち研究室OBも微力ながらそのサポートをさせていただければと思います。
今後、薬理学研究室に入室する皆さんの素晴らしい活躍を目にすることができる日を研究室OBとして楽しみにしています。



・左上の写真
河川水中の重金属類の分析(質量結合プラズマ質量分析装置)
その他の写真(左から)
・シアンフェノール類の分析における蒸留操作
・農薬の固相抽出操作の一部
・採水風景