研究内容(吉川)

1. イヌ乳腺腫瘍におけるBRCA2の変異解析および機能解析
2. BRCA2の発現制御機構の解明

避妊をしていない雌イヌはその約50%が乳腺腫瘍を発症してしまいます。また、犬種により乳腺腫瘍の好発品種が存在することからも遺伝的要因が存在すると考えられています。
ヒトにおいて乳癌の原因遺伝子としてBRCA2という癌抑制遺伝子が1995年に同定され、BRCA2に変異が存在したり、発現量が低下したりすると乳癌を発症しやすいことが報告されています。我々の研究室においては、イヌにおいてもBRCA2の変異や発現量の低下が乳腺腫瘍発症と関係する可能性を示唆してきました。
イヌにおいてこのような機能をもつBRCA2について変異解析と機能解析を行い、腫瘍と関連する変異をこれからも同定したいと考えています。次に腫瘍関連変異を簡単に検出する方法を確立することで、イヌにおいて乳腺腫瘍のリスク診断法に応用することを目指しています。
また、イヌBRCA2の発現量の低下が乳腺腫瘍発症と関係していることを示したので、どの様にBRCA2の発現が調節され、その機能が破綻することが腫瘍発症と関係するのかも調べています。


3. DNA鎖間架橋修復に貢献するFanconi/BRCA経路の機能解析

ゲノムDNAは常にDNA損傷をうける可能性があり、細胞にはDNA損傷の種類により様々な修復系を持つことで、これに対応しています。DNA損傷の中でもDNA鎖間架橋は、DNAの複製やRNAの転写を阻害するので、最も有害なDNA損傷の一つです。Fanconi/BRCA経路は細胞にとって有害なDNA鎖間架橋を修復する経路です。この経路の詳細は未だ不明な点が多く、私達のグループはどの様にこの経路が調節されているのか研究しています。


4. 分子生物学的アプローチによる比較腫瘍学

上述のBRCA2を含むDNA損傷修復に関わる遺伝子産物は、ゲノムDNAの維持に貢献しており、それらの変異によりゲノムDNAの安定性が低下すると腫瘍発症に繫がると考えられています。私達のグループはヒトを含めた様々な動物種における研究結果を比較することで、様々な動物間における腫瘍発症メカニズムの相違を解明することを目指しています。


 より詳しい内容を知りたい方は 獣医生化学研究室にお越しいただくか、yyoshika@vmas.kitasato-u.ac.jp(@を半角に変えてください) までメールください。